「新・天文学入門 カラー版」(嶺重慎・鈴木文二)

新版、こちらはさらに中学生向きです

「新・天文学入門 カラー版」
(嶺重慎・鈴木文二)岩波ジュニア新書

以前紹介した「カラー版 天文学入門」
2005年の出版でしたので、
現在もまだ流通しているかどうか
調べたら…、
何と改定版が出ていました。
すぐさまAmazonで取り寄せ、
読んでみました。

「第1章 わたしたちは
どこから来たのだろう」

2011年と2014年における
彗星の重水素比率の研究を取り上げ、
地球上の生命の源となった
「水」の由来について、
旧版よりも明確に解説されています。
また、ハビタブル・ゾーンという
新しい知見を紹介し、
地球外生命の存在にも言及しています。

「第2章 わたしたちの太陽系と
系外惑星系」

第2章は見出しから変更されています。
ここでの大きな変更点は
もちろん冥王星の取り扱いです。
旧版では特殊な「惑星」だったのが、
「太陽系外縁天体」として、
惑星はおろか、衛星、小惑星、
隕石、彗星、流星のあとに
位置付けられているのですから、
立場は大きく後退しています。

さらに系外惑星系についての記述が
大幅に増え、旧版では
「発見された惑星をもつ恒星は、
100を超えています」が、
本書では「2000個近くにも
のぼります」と修正されています。
この10年間の
天文学の発展が現れています。

「第3章 深化する星ぼしと元素の起源」
この章の変更点は少ないのですが、
写真が新しいものに替えられ、
鮮明なものが多くなっています。

「第4章 天の川銀河と生命のふるさと」
第4章も見出しが変わりました。
内容も
ダークマターにかかわる記述が増え、
最新の研究成果が盛り込まれています。
また2013年完成の
南米チリ・アルマ望遠鏡や
2014年の国立天文台野辺山観測所の
45m電波望遠鏡を使った研究として、
分子雲の中に存在する
タンパク質発見の成果が
記されています。

「第5章 銀河、そして宇宙へ」
旧版の第5章と第6章は1つにまとめられ、
第5章の内容が大幅に割愛されています。

ページ数は旧版と変わりません。
全体として、
地球に近い天体の記述を増やし、
銀河系外の宇宙については
思い切って削った形となっています。
また、写真等の資料を充実させ、
文章もすっきりさせています。

比べてみると当然こちらの方が
より中学生向きです。
おそらくは10月頃に
教科書で宇宙を学ぶ、
中学校3年生に強く薦めたいと思います。

(2020.2.19)

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